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【ニュートンから】福島第一原発 廃炉の現在(1)

 東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町,双葉町)の事故から,2025年3月で14年となる。2024年11月には核燃料がとけ落ちて固まった「燃料デブリ」の試験的な取り出しにはじめて成功した。ウラン燃料の核分裂によって発生した強力な放射性物質を含む合計880トンものデブリの取り出しは廃炉の最難関となる工程だ。今回の0.7グラムの小石状のデブリの試験的取り出しはどんな意味をもち,これから廃炉作業はどのように進むのか。最新の情報をお伝えする。

写真・図版
福島第一原発1号機から3号機の2024年12月現在の状況を図解した。1号機の燃料デブリは圧力容器の内部には少なく,多くが格納容器にとけ落ちていると考えられている。2号機の燃料デブリは圧力容器の内部に多く残り,格納容器にとけ落ちたものは少ないと考えられている。3号機の燃料デブリは圧力容器には少なく,格納容器に一定程度存在すると考えられている。

 2024年10月30日,東京電力福島第一原子力発電所2号機では,廃炉作業の今後を占う重要な作業が行われていた。「燃料デブリの試験的取り出し」である。燃料デブリとは,とけ落ちた核燃料などが固まってできた物質だ。放射性物質を含む燃料デブリは,廃炉を進めるうえでは絶対に取り除かなければならない。デブリの取り出しを進めていくために,少量のデブリを試験的に採取することが今回の作業の目的である。

作業開始、新型コロナなどでたびたび延期

 福島第一原発で核燃料をおさめていた構造物を,原子炉圧力容器(圧力容器)という。圧力容器は,気密構造物である原子炉格納容器(格納容器)におおわれている。2号機の燃料デブリは圧力容器の底にも,格納容器の底にもたまっている。今回取り出しにいどんだのは,格納容器の底にたまった燃料デブリだ。当初試験的取り出しは2021年内の開始を予定していた。だが,新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けるなどしたため,また作業の安全性を高めてより確実に実行するために2024年に延期してはじまった。

 この日,格納容器の下方側面…

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